子ども向けファンタジー番組,特に変身ものに対する問題提起

さいきんの子ども向けファンタジー番組,特に変身もの(仮面ライダー,ウルトラマン)は,以下に示す理由により短期的には面白いかもしれないけれども,長期的にはストーリーに深みがなくなり,つまらなくなっていると主張し,皆さんのご意見を聞きたいと思います.

ストーリーに深みがなくなっていると感じる理由:以下の事象をストーリーに導入することにより,筋書きに制約がなくなり「何でもあり」の台本になっているから.

  • 時間を遡る(タイムトラベルの類い),時間を逆転させる
  • 死んだ登場人物が生き返る
  • パラレルワールド(平行世界):別の世界(別の歴史)があって,そこでは主要な設定(主人公が変身して戦うなど)は維持されるが,それ以外の設定は大幅に変更される.

提案:上の3つの事象をストーリーから排除する

筆者はこの主張が現在放映中の仮面ライダー番組を批判することになっていることを理解していますが,その番組を視聴していないので内容をよく知りませんし,その番組を契機として批判しているわけではありません.以前から思っていたことをまとめたものです.

人工エラで水中呼吸、現実的ではありません

人工エラをつけて人間が水中で呼吸する、といった記事を何度か目にしたのですが、それはほとんど不可能だと思えるぐらい難しいことです。理由をここにまとめます。

(2018/8/26追記:数値に間違いがあったので修正し、また分かりやすいように一部書き直しました。結論は変わりません。)

  1. 人は1分間に約10リットルの空気を呼吸します。(体重50kgの場合。DAIKIN「空気の学校」の解説より。)(当初の記事では毎分約20リットルと書いていましたが、10リットルの間違いでした。お詫びして訂正します。)
  2. 空気は1cm3の水に、最大で約0.03cm3溶解します。20℃の水なら約0.02cm3。(理科年表オフィシャルサイト「気体の水に対する溶解度」より)
  3. ですので、人工エラをつけて水中で呼吸するには、理想的な状態を仮定しても(補足説明12)、1分間あたり約333リットルの水を処理する必要があります。
  4. それを人間が顔に装着できるような装置にすることが出来るでしょうか。仮に10cm四方(断面積が約0.01m2)の装置にすることが出来たとして、1分間あたり333リットルの水を処理するためには、装置を通過する流速は0.5m/s以上になります。(補足説明3
  5. 2018年8月時点の競泳の世界記録を見ると(Wikipedia)、50m自由形の記録が20秒台(約2.5m/s)、1500m自由形の記録が14分台(約1.7m/s)です。ですので、この装置を使って水中で呼吸をするためには、理想的な状態を仮定しても、世界記録の1/5~1/3程度のスピードで泳ぎ続ける必要があります。(そのペースで泳いでも、1分間に呼吸する空気は約10リットルで変わらないとすれば、ですが。)
  6. また(これは明確な根拠はありませんが、エンジニアのセンスに照らして考えると)人工エラの効率が10%以上になるとは考えにくいので(補足説明4)、装置を通過する流速を5m/s以上にする必要があると考えられます。つまり世界記録の倍以上のペースで泳ぎ続ける必要があると予想されます。現実的ではありません。
  7. もちろん、装置を大きくすれば通過流速を小さくできます。たとえば約30cm2四方(断面積が約0.1m2)の装置にすれば、通過流速を1/10にできます。ですがこの場合は、その装置の流体抵抗が大きくなるので、その抵抗に打ち克って泳ぎ続ける必要があります。(補足説明5
  8. 仮定をより現実的にして、水温を10℃、空気の取り出し効率を数%と仮定すると、上記の寸法の装置でも世界記録ペースで泳ぎ続ける必要があります。
  9. となると、必要な量の空気を水から得るには、ポンプを動かして大量の水を処理する必要があります。それも、毎分数1000リットルの水を流せる本格的なポンプです。そのポンプを動かす動力も必要です。水中でエラ呼吸する、という当初の目的とは離れた構成になってしまいますし、それだったら酸素ボンベを背負って潜る方が現実的です。(補足説明6
  10. 以上のような説明をすると、では魚はどうして水中で生きていられるのか、と聞かれます。理由はぱっと思いつくものだけでも3つ挙げられます。
    1. 魚は人間ほど、酸素を必要としない。そもそもほとんど空気がない場所で生息していること、脳が小さいことなどから容易に推測できます。(補足説明7
    2. 魚は人間より効率よく泳げる。
    3. 魚のエラは、人工エラより効率がよい。魚はエラに血管が通っていて、エラから血液中に直接、酸素を取り込みます。人間が使うための人工エラは空気を気体の状態で水から抽出するので、魚のエラよりも非効率です。

思いつくところを説明してみました。参考になれば幸いです。

以下、補足説明です。

  1. 理想的な状態を仮定するとは、空気が水に最大溶解度(0.03cm3。ちなみにこれは0℃のときの値で、温度が上がると溶解度は下がります)まで溶けていて、かつ、その空気を100%取り出すことが出来る、という仮定です。
  2. 水面近くでは、空気が水に最大溶解度近くまで溶けているという仮定は合理的です。しかしその空気を100%取り出すことが出来ると仮定するのには無理があります。このことは6.で説明します。
  3. 333 l/min.÷0.01 m/s≒5.55×10-3 m3/s÷0.01 m/s=0.555 m/s
  4. 水の中に溶け込んでいる空気を取り出すには、圧力を下げて空気を抜き出すか、高温にして溶解度を下げて取り出します。前者は真空ポンプなど、大がかりな脱気装置が必要です。後者は100℃まで水温を上げても6割程度しか取り出せません。(理科年表オフィシャルサイト「気体の水に対する溶解度」より。0℃と100℃の水の溶解度の差の分だけ空気が出てくる。)人工エラの空気取り出し効率がこれより優れているとは考えにくく、むしろ低いと予想されます。溶存空気の10%も取り出せればいいほうなのではないか、というのが金野の感覚です。
  5. 「水は装置を通り過ぎるだけだから、流体抵抗はとても小さいのでは?」と考える方もいるかと思います。その場合は空気の取り出し効率が非常に低くなるはずです。水をしっかり処理する(多くの空気を取り出す)ためには水と装置が長い時間接触している必要があり、抵抗を小さくするのは困難です。
  6. 人工エラの可能性として示されているものの多くは、水分子より小さくて空気だけを通すような微細な穴が空いている膜を使い、空気を取り出します。専門的な話になりますが、このような膜を使ってまとまった量の空気を水から取り出すためには、大量の水に大きな圧力差をかけて処理する必要があり、また時間もかかります。人間が背負って泳げるような小型の装置にするのは非現実的です。具体的な数値で示すことは出来ませんが、金野の間隔に照らすと、人間ひとりが呼吸できる量の空気を水から取り出すことの出来る装置を、もし四畳半の部屋に収まるサイズに作ることができたら、非常にコンパクトだと主張してよいでしょう。
  7. 論文「魚類の酸素消費量について」には83cc/hr/kgという数値が示されていますので、計算しやすいように約100cc/hr/kgとすると、重量50kgだったら1時間あたり5リットルの酸素を消費します。人間は毎分20リットル呼吸し、空気の1/5が酸素なので、酸素の量だと毎分約4リットル≒1時間あたり240リットルです。単純比較すると、魚は人間の約50分の1の酸素しか必要としないことになります。実際には人間は吸い込んだ空気中の酸素を全部消費するわけではないので、差はもっと小さいと思われますが、それでも魚よりは多いでしょう。
  8. ここまでは流体力学的な観点からの説明のみをしてきましたが、生理学的にも問題があります。たとえば、水には酸素が窒素より溶けやすいので、酸素濃度の高い空気が取り出されるため、酸素中毒(Wikipedia)の危険性があります。

ノルウェーに長期滞在中です

 

P1010047

ブログには書いていませんでしたが、金野のFacebookを見ている方はすでにご存じと思います。

4月からノルウェーのトロンヘイム(Trondheim)というところに来ています。ノルウェー理工大学(NTNU)で1年間、海外研修するためです。もう4ヶ月が経ちました。来年の3月までいる予定です。

こちらに来る前はブログにいろいろ書こうと思っていた気がしますが、何も書かないまま今日に至りました。おかげさまで何とか、大きなトラブルはなく過ごしています。小さいのはいろいろありましたが。

先日はじめてトロンヘイムを離れて旅行に行きました。船で1泊2日の旅をして、帰ってからすぐ電車移動で1泊2日。楽しい4日間でした。上の写真は、船でØrnesという街の港を出るときの写真です。

3Dプリンターを試す

2015年12月に、中国産の格安3Dプリンターキットを買ってみました。

160119-3dprinter

Aurora Prusa i3という3Dプリンター。AliExpressでキットを購入して組み立てました。380ドルだったから、いまの為替相場だと4万5千円ぐらい。同じ系統でもっと安いキットもありましたが、販売店の評判などからこの機種を選びました。

安いだけあって、制御基板にハンダがちゃんと乗っていなくて、ヒートベッドの通電ON、OFFを制御するFET(だと思う)が接触不良を起こしていました。これに気づくまでかなり悩みましたねぇ。気づいてハンダを乗せ直したあとは、問題なく動作しています。

それとヒートベッドの高さの調節をきっちりやらないと、材料がヒートベッドに定着してくれませんでした。ヒートベッドというのは温度調整機能付き台座のことで、上の写真では青く写っている板のところです。50~100℃ぐらいに暖めた状態で使います。

160119-eiffeltower

上記の3Dプリンターで作ったエッフェル塔模型。先端近くまでは順調に成形できたのですが、終盤のところで材料がうまく乗らなかったようで、いちばん先端は成形できていません。

このキットを購入する前、2015年の夏に、小型の3Dプリンターを導入していろいろ試していました。流体工学研究室なのに3Dプリンターを導入した理由は、ひとつは実験装置を作るためです。ちょっとした装置を作るのには、いまは3Dプリンターの方が簡単にできます。そのほかに仕事を楽にするためのツールを作るのにも役立っています。

新しく組み立てた方は、まだ有効活用には至っていませんが、今後活躍する予定。妄想が広がります。

3Dプリンターに興味がある人向けの説明:

今回購入したのはPrusa i3の派生モデルです。成形可能サイズが18 cm四方ぐらい、最小積層ピッチ0.1 mm、ノズルは1基でノズル径0.4 mmなので、2015年の3Dプリンターの中では中堅ぐらいの性能だと考えています。詳細に調べたわけではないですが、同程度の性能の既製品を6万円~20万円ぐらいで購入できるようですので、4.5万円は格安と言ってよいと思います。激安だと言いすぎかな。

安いだけあって、上に書いたように制御基板にハンダ付けが不十分なところがありました。それから、付属のSDカードに組み立て方法を解説した動画が入っているのですが、抜けている章がありました。(紙のマニュアルはない。)完成させるまでのハードルが高いですね。

2015年に買ったもの(2014年も)

2015年は、高い買い物はしませんでした。いま振り返ってみると、高かったのは下記のものぐらい。

いちばん高かったのはETC装置。2015年までつけないでいたのですが、あったほうがいろいろと便利だと考えて、投資しました。料金所を通るときの時間短縮になるのがひとつの理由ですが、財布から現金が減らないのもありがたい。金野はサラリーが銀行に振り込まれる職業なので、ATMに現金を引き落としに行く回数を減らせるのがうれしいのです。

2番目のメガネは、近距離のものを見るためのメガネ、つまり老眼鏡です。自宅用と携帯用の2つを作って上記の金額ですから、安い方でしょう。(メインで使っているメガネは高かった。

3番目と4番目は、金野自身よりもパートナーが喜んでいます。特にトイレのプラズマクラスターイオン発生機はいいらしい。集合住宅住まいで、トイレには換気扇があるけど窓がないのですが、プラズマクラスターがあるとトイレの匂いが全然違うそうです。(金野は匂いに鈍感で、よく分かりません。)

2013年までは「買ったもの」を紹介していたのですが(2010年2011年2012年2013年)、2014年はしていなかったので、これも調べてみました。

いちばん高かったのは、車のタイヤ交換の金額だったようです。次いで、 マニフレックスのマットレス、断裁機(紙の書籍を電子化するため)、カラープリンタ(買い換え)、USB DAC(PCが再生する音の質を上げるもの)と続く。

2014年の方がいろいろ買っていたみたいです。2015年は抑え気味でした。

なお、自分のために買ったもののみここに書いています。実家の両親にWii Fit Uを買ってプレゼントしたのはもう少し値が張りました。(使ってるかなぁ。)

2015年を振り返る

何はともあれ、このブログを更新しない一年でした。読者の皆様(いるのか?)申し訳ございません。

2015年は、ここにはまだ書けないこともあるのですが、これまでに蒔いてきた種のいくつかが花開き、いくつかは蕾にまで膨らんだ年でした。2016年にはいろいろ新しいことができそう。楽しみです。

研究のほうは、うまくいかないこと多数。今年は研究テーマを少し絞ったのですが、それでもぜんぶ順調に回っているとは言い難いです。今年も、自分で回さないといけない研究がたくさんあって、金野自身がボトルネックになって進まない。研究への取り組み方を変えなければならないと、もう2年以上前から思っているのですが、まだいい方法が見つかりません。ただ、2016年には短期的な解決策がひとつ実現する予定です。

ありがたいことに、実用につながるかもしれない共同研究がひとつ動き始めました。これも自分で回さないといけない状態になっていて、まだ成果を出せていませんが、今年度中には何とかしたい。

授業や教育面は、今年はあまり進歩しませんでした。今年は新しいビデオ教材を作らず、プリント教材や演習の方法を工夫するなど。演習用教材は少しは進化したかな。3年ぶりに担当する授業もありました。

これもブログに書けていませんが、海外出張には4回行きました。6月、トロンヘイム(ノルウェー)に2014年に続いて2回目。6月末から7月頭にかけて、サンクトペテルブルク(ロシア)。8月にマルメー(スウェーデン)。そして12月にトロンヘイム(ノルウェー)3回目。

プライベートでは、いろいろ遊んだり試したりしたことがありました。(あまり実らず。)

P1020184

トロンヘイム空港で、帰りの便を待っているときに見た虹。太陽が低いせいでしょうか、虹が地面から立ち上がっていて、金野のカメラでは撮れませんでしたが反対側までほぼ180°ありました。外側にも薄い虹が架かっています。

虹の根本には宝物が埋まっている、という伝説があるそうですね。トロンヘイムに宝物あるかな?

トロンヘイムの風景

ノルウェー出張のときの写真などを.

P1020087

これは行く前の成田空港.

P1020142

ノルウェー科学技術大学(NTNU)の顔に当たる建物.これは11時半ぐらいの映像.ところどころに雪が残っていました.

P1020146

上と同じ建物,打ち合わせが終わって帰るころだから16時前のはずですが,もう暗くなってきています.

P1020157

ニーダロス大聖堂前にあったオブジェ.

P1020161

ニーダロス大聖堂.トロンヘイムの観光名所です.壁面の彫刻が有名なのですが,この写真だと分からないですね.

P1020164

ニーダロス大聖堂の裏側.

P1020169

広場の風景.16時頃だったはずです.ツリーが装飾されています.その左の尖塔のようなものは,Olaf Tryggvason(ノルウェー王でトロンヘイム市を作った人らしい)の像です.

P1020175

通りの風景.

2枚目以降の写真は12月4日に撮影しました.この街に出張するのは3回目ですが,冬の時期に行ったのははじめてでした.朝は8時を過ぎたあたりからやっと空が明るくなってきて,15時を過ぎるとだんだん暗くなり,17時ともなると真っ暗です.今年の6月に出張したときは昼が長くて,夜はほぼなかったのですが.

北欧の初冬を経験できてよかったです.

博士論文審査のopponentを勤める(審査会編)

就任・査読編の続きです.

12月3日,ノルウェー科学技術大学での博士論文審査にopponentとして参加してきました.飛行機の便の関係で12月1日に日本を発ってノルウェーのトロンヘイム(Trondheim)に行き,現地の先生と打ち合わせしたりしていました.

博士候補者の指導教員の先生から言われたのは,「アジア人は遠慮深いやつが多いけど,どんどん質問していいんだぞ.いや,質問しないといけないんだぞ.遠慮するな.」

…マジですか.いや質問しますよ,しますけど,緊張するじゃないですか.

当日はもうひとりのopponentの先生とホテルのロビーで待ち合わせて,徒歩でNTNUへ.道すがら,もうひとりの先生のopponent経験などを教えてもらいました.なお今回の審査委員会は,NTNUの先生がひとり(この人が代表),フィンランドの先生(first opponent)と金野(second opponent)の計3名で構成されます.

審査会は,まず午前中にtrial lectureというのがありました.これは博士候補者が自分の研究テーマのみならず広い専門分野の知識を持っていることを確かめるためのもので,テーマは審査委員会が相談して決めて,審査の2週間前に候補者に伝えます.金野はテーマの決め方が分からなかったので,試みにice mechanicsというテーマを提案してみたのですが,それだと幅広すぎるということでもう少し絞り込んで,“The role of mechanical properties of sea ice in the ice action on ships” というテーマに決まりました.

このtrial lectureのあたりからだんだん分かってきたのですが,ノルウェーの博士論文審査は,原則として博士候補者とopponentの間でのやりとりがメインで,それ以外の人は原則として発言しないようです.今回の審査に関していうと,午前,午後ともに国内外から多数の聴衆が来ていましたが,候補者と審査委員の他は誰も発言しませんでした.opponent重要じゃん! どんどん緊張が増します.

(おかげで,時差があっても眠くならずにすみましたが.)

昼休みは,指導教員と審査委員の先生たちと食事したあと,審査委員代表の先生のオフィスで,博士論文審査報告書を途中まで作りました.それと,午後の審査の際に代表の先生がopponentのプロフィールを聴衆に紹介するので,金野の経歴などを説明しました.

午後が審査の本番,博士論文の内容に関する質疑応答です.先ほど聞かれたopponentのプロフィールが紹介されたあと,審査委員代表の先生が「opponent以外の人が発言するときは,まず司会の私の許可を取るように」との注意がありました.えっ,そういうもんなの!? opponent重要じゃん!? ますます緊張が増します.

候補者が博士論文の内容を発表しました.たしか45分間だったと思います.事前に論文を読んでいたので概要は分かっていましたが,発表を聞きながら気になるところをメモしていきました.いま見返してみると,ノートに3ページのメモを作っていました.

次に,opponentとの質疑応答(対決!)がはじまります.まずはfirst opponentからはじまりましたが,その先生がメモを片手に部屋の前方に出ていって質疑応答をはじめたのには焦りました.椅子に座ったまま質問すればいいと思っていたからです.対決感出てましたねぇ.

分からないところを質問するだけじゃダメらしい,といまさらながら気づき,自分の番を待っている間は,何をどういう順番で聞いたらいいだろうかと構想を練りました.前の先生の質疑応答は1時間近くかかったと思います.自分の質疑応答の作戦を立てる時間が取れたのはありがたかったですが,自分の番が来たときにそんなに長い間質疑応答していることができるのだろうかと心配もしていました.

first opponentの最後の質問が印象的でした.「あなたの研究成果の中で,10年後にまだ残っているものは何か?」 面白い質問ですよね.自分の研究を客観的に評価できていないと,適切な答えが出てこないはず.今回の候補者は適切に回答していたと思います.

そしてついに金野の番.はじまったのは,ちょうど3時でした.招いてくれたことへの礼をぎこちなく述べたあと,拙い英語を駆使して質問しはじめました.

まず,事前に送ったコメントについて,説明を求めました.(発表の際には,そのことに触れられていなかった.)相手がすんなり自分の間違いを認めて訂正してくれたので,少しほっとしました.流れの計算方法についていろいろとやりとりしたあと,氷の割れ方が不自然に見えることを指摘して議論.

first opponentとのやりとりでも少しずつ見えてきていたのですが,今回の博士論文はソフトウェアを開発したことが重要な成果で,しかしひとつひとつの部品には他の人の成果をそのまま取り入れたものも多いようでした.そこで,何が自分の成果なのかを説明してくれるように繰り返し求めました.自分の英語が拙いのでうまく伝わっていないらしい局面もありましたが,こちらが欠点を指摘して相手がそれを素直に認めるたびに,金野が”But you must defend your thesis!”と言って自分の成果をアピールするよう促したのは相手の印象に残ったようでした.(あとでディナーのときに言われました.)

終わったときには45分ほど経っていました.もしかしたら短かったのかもしれませんが自分が聞きたかったことはぜんぶ聞けたので,そこで終わりにしました.終了後に別室で打ち合わせて,審査合格を出し,晴れて博士候補者は博士になりました.

自分の質疑応答がopponentとして十分だったのかどうか,少し心配でしたが,審査委員の先生や指導教員の先生は,とてもよかったと言ってくれました.いくらか差し引いて受け取る必要があるだろうとは思いますが,ほっとしました.再び代表の先生のオフィスに行って,審査報告書を完成させてサインし,オフィシャルな仕事は終了.

伝統的に,博士候補者が審査を通過すると,関係者をディナーに招待して謝意を表するのだそうです.金野も招かれて,行ってきました.博士候補者の両親と妹さんが来ていて,総勢30名ほどだったでしょうか.盛会でした.金野も日本からだるまを持って行って,目を入れてもらったりしました.それから博士論文にサインをもらいました.(ミーハー)

博士論文審査のopponentというシステムは,北欧に特有で他の国にはあまりないもののようです.opponentを勤めることは,もう二度とないかもしれないなぁ.今回は非常に貴重な体験をさせてもらったと思っています.専門分野の研究内容について英語で詳しく議論するのですごく勉強になったし,重要な仕事をやり遂げたので,自信にもなりました.

それと,日が短くなったトロンヘイムを経験できたのもよかったです.

 

博士論文審査のopponentを勤める(就任・査読編)

12月3日,ノルウェー科学技術大学での博士論文審査にopponentとして参加してきました.

opponentというのは辞書には議論の相手,敵対者,反対者などと書いてあります.今回の場合は,博士論文を精読してその内容について博士候補者に質問したり,欠点を指摘するなど,博士論文に対する厳しい攻撃を加える人の役割です.
この攻撃に耐え抜けたときのみ,審査を通過して博士になれる,というわけです.ですので審査は”PhD defense”と表現されます.

金野が極東からノルウェーまで呼ばれたのは,博士論文の分野が金野の研究分野と丸かぶりだからだと思われます.近い分野の偉い先生を審査に呼ぶのではなく,まったく同じ分野の研究をしている人を呼んで戦わせるらしい.

8月にスウェーデンに出張しているとき,ノルウェーの偉い先生からメールが届きました.メールのタイトルが”Opponent”.びびりました.
内容を読んだところ,博士論文のopponentになれということ.スウェーデンのホテルで,opponentはどんな意味で何をすればいいのか調べてから,承諾の返信をしました.

博士論文のPDFファイルが送られてきて,それを査読してコメントを返したのが10月末でした.ぜんぶで290ページもある論文で,また締切がちょうどうちの学科のJABEE実地審査の時期と重なっていたため,その直前の九州出張の期間や実地審査の待機中などに査読したりコメントを書いたりしていました。あの数日はハードだった….

でも自分と同じ研究分野なので,論文の勘所はだいたい分かりました.論文を書いた人には悪いのですが,欠点や突っ込みどころも容易に見つけられました.自分も同じところを失敗したり,時間をかけて検討したりしてきたわけですから.

そして12月3日の本審査に至るわけですが,それについては稿を改めたいと思います.